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『萬葉集釋注8 巻第十五・巻第十六』伊藤博(集英社文庫)

『萬葉集釋注八 巻第十五・巻第十六』伊藤博(いとう・はく)(集英社文庫ヘリテージシリーズ)全10巻

2005年12月21日初版発行
678頁(本文605頁・注・解説・エッセイ)




収録作品(目次)

万葉集 巻第十五(3578~3785)
万葉集 巻第十六(3786~3889)

解説 万葉集解説七(三田誠司)
旅人をめぐって―私の愛する万葉集(三木卓)


万葉集のすべての歌を訳し、それぞれの歌について解説をした本。
筆者の知る限り本書のような書籍はこれのみである。
全訳されたものは、ほかに『新版 万葉集 現代語訳付き』伊藤博(全4巻)と『万葉集 全訳注原文付』中西進(全4巻+別巻1)とがあるがそれらには、解説・評釈はない。

「これまでの万葉集の注釈書は、一首ごとに注解を加えることが一般的であった。だが、万葉歌には、前後の歌とともに歌群として味わうことによって、はじめて真価を表わす場合が少なくない」(本書p.3)との考えから注釈されている。

端正で達意の文章が心地よい。

注釈書は見開きページの上や下の何分の一を区切って、そこに小さい文字がびっしりと並んでいるものも珍しくないが、本書は注はうしろにまとめて、本文の文字は大きく行間は広く、読みやすい素晴らしい構成である。ページの下部隅に歌番号が付されているので番号が分かれば、目当ての歌を楽に探し出せるのも便利。

それから、第1巻から順に読まなくとも各巻単体でも分かるように配慮されているのもよい。

大部の本で読み通すのに時間がかかるが、万葉集のすべての歌を知りたい人には本書が最良である。
当然、研究する人は必読必携。

p.22

君が行く 海辺の宿に 霧立たば 我が立ち嘆く 息と知りませ(3580)
(きみがゆく うみへのやどに きりたたば あがたちなげく いきとしりませ)

あなたが旅行く、海辺の宿に霧が立ちこめたなら、私が門の立ち出てはお慕いして嘆く息だと思って下さいね。(p.34)

新羅に遣わされた使者の夫との別れに際しての歌という。
古代の人は、ため息が霧になるという考えを持っていたらしい。現代人は、霧の美しさに感動することはあっても、それは自己の外の現象と捉える。一方、息が霧になるというのは、生命的、生物的、身体的な捉え方である。その感覚は、筆者には(おそらくほとんどの現代人にも)実感できないが、興味深い。この点を考慮して歌をみると力強さや「念」のようなものを感じ面白い。

p.258

君が行く 道の長手を 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも(3724)
(きみがゆく みちのながてを くりたたね やきほろぼさむ あめのひもがも)

あなたが行かれる道の長道、その道のりを手繰って折り畳んで、焼き滅ぼしてしまう天の火、ああ、そんな火があったらなあ。

流罪にされた中臣宅守の妻が別れに際して詠んだ歌。

巻16に「竹取物語」に材を取った歌を収める。(p.361~)

[関連]
『萬葉集釋注八 巻第十五・巻第十六』伊藤博(1998・集英社)単行本

[参考]
『新版 万葉集 現代語訳付き』伊藤博(全4巻)

『万葉集 全訳注原文付』中西進(全4巻+別巻1)

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